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リーグ第30節。VS清水インパルス

リーグ戦残り5試合。
この清水戦は絶対に負けられない!

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ピッチ上、両チーム選手が整列している。

それを見ながらの記者席。

今シーズン大躍進・・・
若手中心のチーム作り・・・
そしてクラブのレジェンドが指揮官というところまで共通している両チーム。

「タイトルのかかったこのタイミングでぶつかるってのは、なかなか燃える展開だな。」

その記者席には当然藤澤の姿も。


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藤澤
(・・・・・
とうとうここまで来た・・
ETUも、椿も!
首位まで勝ち点3差・・・!
残り5試合でこの調子を維持できれば・・・
タイトル獲得は十分すぎるほど可能な距離!!
そしてこの快進撃が偶然ではないと証明するかのように今季のETUの象徴である椿の・・・
アジアカップメンバー選出・・・!!)

ここで藤澤は目を閉じ、天を仰ぐ。

気を抜くと泣きそうになってしまうのである。

ETUも椿も、大切なのはこれから。
泣いている場合ではない。
リーグの前半戦は清水にやられまくった。
その清水に自分たちの成長を見せつけてやらなくてはならない!!

(そしてその勢いのまま最後まで駆け抜ける・・・!!)

藤澤の期待は膨らむが、今日のメンバーで、それが可能かどうか・・

清水ベンチではスーツを着た蛯名監督が立ち上がって選手たちに叫んでいる。
「ヘイヘイ、シャキッと動け!
そんなんじゃいいゲームの入り方出来ないぞ!!」

そして独り言
「試合前から大声出させんじゃねえ、まったく・・」

そこに
達海が歩いてきた。
「はっ
相変わらず熱血だねえ、エビさん。」

蛯名
「お前こそ。
そんなスカした態度で監督やれてる事が俺には不思議でならないよ。」

達海
「えー?
そんなにかわからないと思うけど。」

二人、握手をして

蛯名
「選手の頃からお前の事はよくわからなかった。
けど・・
就任1年目でこの位置につけてて、代表選手まで輩出するとはさすがだな。」

達海は少し得意顔。

蛯名は眉毛を吊り上げて

「わかってんな、達海。
先輩としてこれ以上お前にデカイ面はさせねえ。
今日も泣いてもらうからよろしくな。」

達海
「はっ
どこまでも体育会の住人だねえ、エビさんは。」

かっ、そういうところがスカしてんだよ、と返す蛯名。

いよいよキックオフ。

ピッチの中央では椿がボールに足を乗せて笛が鳴るのを待っている。

スタンドでは羽田を中心にETUサポーターたちが盛り上がる。

ピィッ

試合開始。

清水は大谷浩輔を先頭にプレスをかけに来る。

スタンドでの後藤と笠野の会話。

後藤
「清水の前線からの守備はやっぱり鋭いですね。」


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笠野
「そりゃそうだ。
やらないと蛯名に怒鳴られる。」

後藤
「昔っから兄貴分キャラでしたもんね。」

笠野
「それがハマってるのさ。
自身が選手として全うしたクラブで、ユース年代を相手に熱血指導。
そしてトップチームを任されて。
その時には選手たちの大半が自分の教え子となっていた・・・
選手たちは蛯名のサッカーを理解しているし、指示には従う。
蛯名からしたら、当然、今の清水は土台から自分が作り上げたチームだとに思っているだろう。」

それで去年は5位で終えた。(結果も出てきた)
そういう時、ETUに蛯名より年下の達海がイングランドで名を上げて帰ってきた。
蛯名としては気に入らない。
前半戦、カップ戦含めて清水とは1分け2敗。
まだ1回も勝っていない。
この結果は蛯名の熱意がもたらしたともいえる。

この流れからして・・

笠野
「こんな大一番での蛯名のモチベーションは、とんでもなく高いって事になるよな。」

ピッチ上。

椿にボールが渡ると清水の10番が椿の足元にスライディング。

これは笛が鳴る。

観客もどよめくが、カードは出ない。

椿はうずくまっている。

松ちゃん
「大丈夫か椿!」

椿はうずくまったまま手を挙げて答える。

蛯名は10番に
「判断早く!
ファウルになるのは1歩目が遅いからだよ!」

蛯名のつぶやき
「まぁ、7番に好きに持たれるよりはいいけどよ。」

フリーキックの位置は、清水のゴールから見て右斜め前方15メートルくらい。

清水にとっては嫌な位置である。

蛯名
「嫌な位置だが、一番怖いジーノはベンチ。」

さらに赤崎は出場停止。
CBは黒田じゃなく亀井。
SBの熊田は久々の出場。
ガブリエルもサイドハーフでの起用。

蛯名
「負ければ優勝争いから1歩後退するようなゲームで・・・
何故勝ってるチームをいじるような真似をする。
達海のああいう感覚が俺にはない。
俺にとっての謎だ。」

蹴るのは堀田。

位置について、助走に入る。

踏み込んで

ドガッ

狙ってきた!

ゴールの右隅!

キーパー飛びつく!

僅かに高い!外れた!

堀田「くあーっ」

ETUサポーターたちも悔しがる。

松ちゃん、白目。
「もうちょっとだけ落ちてれば!!」

蛯名監督の顔は一層険しさを増す。

達海
「オッケーオッケー。
悪くねえ。
このゲームは絶対に落とせねえ。
ガンガンいこうぜ。」

——450話ここまで。

ジャイアントキリング 451話に続く

〇感想

両監督のタイプの違い、関係性について語られた回でした。
タイプは違えども、勝利への執念は同じ。

蛯名も言っていた、そして藤澤も心配していた、達海の采配の真意が非常に興味深い。


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