仙台ドームのVIP席でゴールデンカップスの新旧監督、
早乙女と向井が誰もいない球場を見ながら話している。
先の編成との話し合いを受けて、話題は凡田。
早乙女は、向井がそこまで凡田を推す訳を聞く。
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6月の交流戦で、ここで投げた時の凡田は・・・
6回3失点で勝ちはついたものの、可もなく、不可もなく。
同じ山梨出身という事で注目していたが、選手としての評価は凡庸なものだった。
球速は140キロ手前。
しかしコントロールは良かった。
あと、フィールディングも。
まあ、トータルバランスで何とかローテに入れた・・
そんな印象だった。
早乙女は、スピードがなくてもボールが走ってると感じたという。
これには向井も同意。
その理由は・・・
ボールの回転数。
2400回転/分
日本のプロ野球の中ではかなりいい方。
回転数が多いと初速と終速の差が少なくなってバッターには早く感じるのだ。
以前はそんな印象はなかったという向井。
向井は、凡田が受けたトミージョン手術がいい方向に向かわせたのではないかと言う。
トミージョン手術を受けて確かにスピードは落ちた。
しかし球質は落とさなかった。
休業中に肩、肘、手首のトレーニングをやり込んだのだろう。
あと、モップスの復帰プログラムも良かった。
最初の年は、徹底的に間隔を開けて、タマ数制限もした。
これが良かった。
そして今シーズン。
序盤での投球はショボかったものの、最後に来ての4連勝。
元に戻っているというより、元を越えてきているのだ。
トミージョン手術からの復帰プログラムがかなりうまくいった結果と言える。
FA資格取得選手としたら、かなりお買い得な物件。
これが凡田を推す理由。
(もちろん、コーチとして徳永も欲しい)
山梨ラインで固めようという向井。
ここで早乙女が謎の言葉を残す。
「多分お前の希望は叶う後方に行く気がする。
わしが掴んでいる情報では。」
—
向井は一人、一般席に移り、スポーツ新聞を読んでいる。
記事はどれもモップスの先発補強の内容。
凡田は来年、先発は出来ないだろうな・・
そこに早乙女がやって来た。
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さっきの謎発言について説明する。
儂が掴んだ情報では・・・
「ウチの編成が欲しているテンプターズの一ノ谷は、メジャー志向なんだ。」
向井は初めて聞いたらしい。
それなら一之谷がFA宣言しても、国内移籍する可能性は低い。
向井が情報元を聞くと・・・
知り合いの知り合いの
知り合いの知り合いから掴んだ情報。
ずっこける向井。
それでも早乙女は自信ありげな笑みを浮かべている。
—
場末の居酒屋。
モップスの粕谷コーチと段コーチがサシで飲んでいる。
凡田の話をしている。
沢山補強して、先発の駒は揃った。
来年、凡田にはリリーフに回ってもらうしかない。
しかし来年、凡田はFA。
権利を行使するかどうかはわからないが・・・
凡田の意向を聞かなければならない。
「また先発をやりたいと言ってきたら?」
悩む二人。
FA宣言してほしくない。
リリーフで残って欲しい。
どうやって引き留めるか。
嘘をつくわけにもいかないし・・
球団に金を積んでもらうか?
リリーフで残るピッチャーのために、どれくらいの引き留め料を払ってくれるか???
—
粕谷コーチ、段コーチ、凡田の3人で会談。
両コーチは、フェアを期すために、現場の仕事仲間として話をすると前置きする。
そして来期、凡田にはリリーフをやってもらいたいと、正直に言う。
凡田「・・・」
凡田はちょっと考えて、下を向いて話し出す。
「クライマックスシリーズでリリーフで登板した時、失敗しました。
僕にとっては・・・
リリーフよりも、先発の方がやりがいがあると感じてしまったのです!」
先発をやりたいです!とはっきり言う凡田。
二人のコーチは言葉を失っている。
凡田の中で、FAが決定する。
——137話ここまで。
グラゼニ 東京ドーム編 138話に続く
〇感想
もう夏之介の仙台行きが確定したような回でした。
夏之介の知らない所ではありますが、
ゴールデンカップスの監督からあんなに熱烈に欲しがられて、
同郷の先輩が新コーチとして赴任する球団なら夏之介もやりやすいでしょう。
いや・・でもまだ引き留め料の話が出ていない。
モップスが提示する金額によっては残る可能性もあるのかな。
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