8月4日の午後10時。
DLの選手たちは母校の球場にいた。
甲子園に出場する選手たちのために新品の用具が送られてきたからだ。
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メーカーから提供されたものだが、選手への無償提供は禁止されているので
学校や父母会、OB会などの寄付のおかげで甲子園に出たら実質タダというカラクリ。
檜も新品のグローブをもらってご満悦。
ピッチャーはTV中継で目立つポジションなのでメーカーも特に使ってもらいたいのだ。
グローブをいじってうっとりしている檜を横目で羨ましそうに見ているのは花本と鷲中。
2人はもらえなかったようだ。
飛田とボブは氷運びなど裏方の仕事。
飛田は
レギュラー
メンバー
メンバー外
という同期の3階級が出来ていると怒る。
用具置き場にはバットやグローブ、スパイクだけでなくヘルメットやプロテクターまで新品が並ぶ。
飛田は甲子園をTGC(東京ガールズコレクション)に例える。
強豪校の主力選手が使う道具は小中の子供たちがまねる。
試行錯誤し心血を注いで作った商品はメーカーとていいモデル(選手)に使ってもらいだろう・・
氷運びに使わせる用具はないという厳しい現実。
飛田は
「この世に平等なんてあれへん・・・
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いや・・・
そんなもんいらん・・・
格差と不条理は反骨心を育ててくれる。」
と言い、唇をかみしめる。
—
午前11時30分 月光寮
狩野が自室で目を輝かせてグローブなどの持ち物点検をしている。
いよいよ甲子園練習まであと5時間と迫った。
初めての聖地にワクワクが止まらない!!
中学の同級生が卒業の時に書いてくれた寄せ書きを見る。
見に来てくれればいいけど・・
そして1年生ノート。
これも必死に書いた。
遠い昔のことのように思えるが1年半前のこと。
狩野は家を出て月光寮に入り、鬼頭の事件で謹慎し・・・
恋人のサクラともわかれて
野球部の主将に就任し、革命を起こした日々を思い出す。
この1年半の思い出は味が濃すぎて喉が渇く!!
母親からの手紙を都築が届けてくれた。
開封して読む。
のっけから
おお笑太郎一年ぶりやのワレ!
と威勢がいい。
そして大きな文字で
高校球界のナマズたれ!!
と書いている。
何のことか分からないが・・・
狩野が子供の頃母親から何度も聞かされた話がある。
母親が酔っぱらうと必ずする ナマズの話。
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