群馬にある歌仙の実家へ車で向かっている哲雄と零花。

 


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零花に促されて哲雄が

母さんの実家について

と前置きして話しだす。

まずは哲雄の両親が交通事故で亡くなったところから。

 

当時高1だった哲雄は祖父に引き取られた。

その祖父も1年後にはがんで亡くなった。

 

” 一人で生きていけるような強い男になれ ”

 

という祖父の言葉を胸に

哲雄は祖父の死亡手続きや喪主を誰の手も借りず一人でやった。

 

その後は助成金で高校に通う道を選択せず、中退を選んだ。

誰の手助けも借りずに自立した強い男になりたかったから。

 

バイトをしながらの一人暮らし。

酒たばこなどの娯楽を一切せず、大学に通うためにひたすら金を貯めた。

 

二十歳の時に、相続した祖父の家は賃貸で貸し出して

最寄駅から原付で30分かかる群馬の山奥のガソリンスタンドで住み込みで働きだした。

 

時給は安かったが仕事はヒマで、空いた時間で勉強した。

実働1時間だが20時間営業でワンオペの時間が長いので乙四(危険物取扱者の資格)を取った。

大学入学資格検定にも1発で受かった。

 


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その後は大学に行くための勉強やミステリー小説を書いて過ごした。

その頃はまだ小説でプロになるという夢もあった。

いくつか投稿したが全て1次審査で落ちた。

 

そして21歳の頃。

スタンドの営業時間終了間際真っ暗な中、袴姿の若い女性が通りかかった。

足元はかなり汚れておりちょっと不安げな表情も浮かべているので声をかけた。

 

「迷子ですか?

それとも・・・

拐されたか何かして逃げ着てきたんですか?」

 

女性はどちらでもないが、逃げてきたという。

 

哲雄が家出かと聞くと、女性は家出という言葉がわからないようで出家のようなものかと聞く。

 

哲雄が家出の意味を説明するとそれならば家出だと言う・・・

 

やけに丁寧な口調で、その割に言葉を知らない人。

まるで小説の導入のような雰囲気に哲雄はゾクゾクした。

 

行く当てもなさそうなので警察を呼ぼうかと哲雄が呟くと・・

女性は友達の家に向かうところだと、見え見えのウソをついた。

 

夜も遅いうえに街灯もないから誰かに迎えに来てもらった方がいいと哲雄が言うと、

月明りがあるから大丈夫だと女性は答える。

 

 

 

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