丸井が大庭達の話を聞いているころ、

狩野は阿倍野橋の道端に無一文で座り込んでいた。

 


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通り過ぎる若者たちは誰も狩野に見向きもしない。

少しは有名になったと思っていた狩野は寂しさを感じる

 

つらいことは笑いに変えろという母親の言葉を思い出すが全然ダメ。

 

同じく道端ではだしでバイオリンを弾いているおじさんと目が合った。

狩野がにらみつけるとおじさんは抜けてまばらになった歯を見せてニィと笑った。

バカにされたように感じた狩野は

「笑うなボケーっ!!」

と叫んで立ち去る。

 

大通りに出てヒッチハイクを試みるが誰も止まってくれない。

夕方になり、辺りが薄暗くなってきたころ、大型トラックが止まってくれた!

 

のせてくれたおじさんはやたらと声が大きい。

狩野が自分は甲子園で活躍したのに誰も気づいてくれないとぼやくと

がっはっはと大笑い。

 

おじさんは高校野球に興味はなく、


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昔付き合っていた西宮のコに一度甲子園に誘われたが暑いだけだからいやだと断ったという。

 

おじさんは当時バンドに夢中で彼女のことはほったらかしだったと振り返る。

お金はなかったが楽しく充実していたと話す。

 

はじめのうちは割と順調に行って、

メジャー契約してヤマロックの出演も決まったが

そのタイミングで8年同棲した彼女が家から消えてしまった。

残されたのは自分の声があなたに届かないという内容の書置きだけ。

 

おじさんの人生はそこから転げ落ちるように何もかも壊れてしまったという。

メンバーたちはファーストアルバムを作っている最中に全員脱退してしまいバンドは解散。

それから連絡も取っていないと言う。

 

後悔しているかと狩野に聞かれて、

おじさんは全部自分が悪かったと反省する。

自分の主張ばかりで仲間の声に耳を傾けようとしなかった罰だと。

 

この言葉は狩野の心に響いた様子。

 

 

 

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