大阪大会決勝 DL 対 花忠社
現在のスコアは7-10
9回表DLの攻撃。
ツーアウトでランナー1,3塁。
話し合っていた花忠社が守備位置につき、狩野がバッターボックスに入った。
ベンチでは監督が手を合わせて拝んでいる。
注目の第一球。糸巻が投球動作に入った。
糸巻投げた!
左打者狩野の内角に渾身のストレートだ!
狩野はスウィングをかけるが空振り!
糸巻は強く拳を握る。
狩野は落ちたヘルメットを拾ってかぶりなおして打席につく。
第2球。
今度は外からストライクゾーンに入ってくるスライダー。
狩野はボールの上を振ってしまい空振り!
これでカウント0-2
糸巻は再びガッツポーズ。
DLベンチの監督や仲間たちは祈るような顔で2人の勝負を見守る。
ここで糸巻はグローブをはずし大声で仲間たちに話す。
決して負けていいと思っては投げていないし
怪物を抑えて勝ちたいだけ。
この気持ちは皆も同じはず。
自分たちの利益を優先して後輩に勝負を避けさせるような先輩には絶対になりたくないと言った。
それを聞いた砂金は外野から悪かったと詫びた。
ここで花忠社メンバーの気持ちが一つになった。
怪物狩野に真っ向勝負を挑んでいる糸巻を仲間たちは頼もしそうに見ている。
野手が全員人差し指立てて天を指すと花忠社の応援席からはあと一つコールが。
そんな中狩野母はスタンドから息子の勝負をしっかりと見つめ、
姉は顔を覆って下を向いている。
サクラは手を合わせてじっと見ている。
菩提先生や先輩たち、共に戦った戦友たちもスタンドから見守っている。
あと一つコールの大合唱が続いている。
狩野は目を閉じ、自分の感覚を研ぎ澄ます。
全ての雑音が消え、ただ暗く、澄んだ水の上に立っている。
狩野に見えているのは18.44メートル先の糸巻のみ。
〇感想
糸巻は気持ちの強い男だ。
先輩の圧力にも屈せず勝負したいという気持ちを貫いた。
その言葉がチームを一つにまとめ上げた。
その気持ちが乗り移ったような2球だった。
前の打席では最初の1球をスタンドまで運ばれたけど
今回は2回も空振り!
読んでいて鳥肌が立つような勝負。
ここで狩野が完全にゾーンに入った。
この状態の狩野を果たして糸巻は打ち取れるのか。
カウント的には糸巻優位。
3球目は何を選択するのか。
果たしてどんな勝負になり、どんな決着になるのか。
ここで終わるのか9回裏があるのか。
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